この状況をもうすこし詳しくみるために、5年間隔の増加率(表1)をみると、世界人口全体の増加率は1950−55年から1990−95年まで若干の変化はみられるが、それほど大きい変化はなかった。しかし先進地域と発展途上地域に分けると、いくつかの差異と変化が認められる。先進地域の増加率は1950−55年の年率1.20%から次第に低下し、1965−70年に1%を割り(0.82%)、1990−95年には0.40%になった。発展途上地域では、1950−55年に2.05%から1985−90年の2.06%まで年率2%以上の増加がつづき、しかも1965−70年(2.52%)まで増加率は上昇した。しかし1970−75年(2.37%)以降低下し、とくに1975年以降に増加率の低下が目立つようになった。そして1990−95年(1.88%)になって初めて2%を下回った。
先進地域では産業革命後にいわゆる「人口転換」(demographic transition)による人口増加の段階があったが、その段階でも増加率が年率2%を越えることは稀であった。またその段階での人口増加は経済発展によって誘発され、同時に経済発展を促進する原因ともなり、現在の発展途上地域の人口増加のように経済発展の障害になることはなかった。それと比較すると現在の発展途上地域の場合は、経済発展が軌道に乗るまえに外的な原因によって人口増加が起こり、しかもそれが年率2%というきわめて激しい増加であることに問題がある。世界人口の状況は、もう少し細かく地域に分けて見る必要がある。5つの大陸別人口は(表2)、1995年、アジアが35億人(61%)、アメリカが8億人(14%)、アフリカが7億人(12%)、ヨーロッパが7億人(12%)、オセアニアが3000万人(0.5%)で世界人口の大陸別配分はかなり偏っている。
人口分布よりさらに目立つのは、増加率の違いである。先進地域と発展途上地域の差異についてはすでに述べたが、ここでは発展途上地域のなかでも大きい違いがあることに注目したい。1950年から現在まで、増加率が高く、ほとんど低下の兆しが見えないのは、アフリカ、中央・南アジア、西アジアであり、ラテンアメリカ、東南アジアはかつて増加率が高かったが、最近低下の傾向がみられる。東アジアは人口規模は大きいが、最近増加率は明らかに低下している。
このように地域間の差異はあるが、一般的に、1975年頃を境にして重要な変化が起こった。1974年にルーマニアの首ブカレストで開かれた国連の「世界人口会議」(World Population Conference)で、初めて「世界人口行動計画」(World Population Plan
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